本研究室では気象に関するデータ解析を行い,自然現象に関する問題解決に向けたアプローチ や独自の自然観を発信できるよう様々な課題に取り組んでいます.科学・技術を駆使した自然の理解への試みや自然と人間活動の関わりを見つめる場として発展していきたいと考えています.卒論の研究対象は様々ですが,人類の遺産とも言える様々な地球観測データを最大限活用して新たな知見を発掘することを共通のテーマとしています.
主な研究課題として,衛星による降水観測データの利活用に取り組んでいます.日本では地上雨量計やレーダによる充実した観測網がありますが,陸から少し離れた海や海外の多くの地域では地上観測データが乏しく,激しく変化する世界の雨の動態は今なお明らかではありません.衛星による雨の観測は,熱帯降雨観測衛星に搭載された降雨レーダ(TRMM PR)および全球降水観測計画主衛星搭載二周波降水レーダ(GPM DPR)により, 飛躍的に発展しました.四半世紀に及ぶこれらの膨大なデータを解析すると,降水の空間構造,雨の降りやすい時間帯,大雨の出現頻度など,降水活動の地域的な特色が見えてきます.こうした自然の状態や変動に関する理解はさらなる探究へとつながり,災害への対応や様々な日々の営みにも関連します.また,データの利点を追究する一方,その観測・推定の限界を正しく理解し,対応を検討することも重要です.私たちが過去・現在の観測からどこまで知ることができるのか,将来何を把握するべきなのかを考えるために,データの精度評価等を行い,課題の洗い出しも進めています.
(参照 https://www.rain-clim.com, Hirose and Okada 2018, Hirose et al. 2017, 2021)