AlGaN屈折率分散ラボ

AlGaN 屈折率分散ラボ | 論文・解析式・計算
量子光エレクトロニクス特論2 / 第1回補助教材

AlGaNの屈折率分散を
論文から計算へ

Al組成と波長を変え、常光・異常光の主屈折率、群屈折率、複屈折を確かめる。測定論文と近似式の関係を読みながら、導波路設計に渡す材料定数を求めます。

HTMLを開くだけで動作します。計算・数式表示・グラフ・CSV保存はインターネット不要です。外部の論文リンクを開くときだけ通信します。

01 計算環境

AlxGa1−xN、真空波長 λ [nm]

入力条件

x = 0:GaN / x = 1:AlN
本教材の使用範囲:450~1064 nm
分散グラフでは両方を表示します。
選択した偏光の端点を破線表示。

温度・歪み・キャリア濃度は入力変数に含めていません。表示桁数は計算精度であり、材料定数の確度を表しません。

x = 0.100、λ = 460 nm

常光 no—
異常光 ne—
複屈折 ne − no—
群屈折率 ng,o—
AlNとの屈折率差 Δno—
dn/dλ [nm−1]—

波長による屈折率の変化

グラフ上にポインターを置くと、その波長の値を表示します。

組成依存と補間模型の比較

組成依存Sellmeier式n の線形補間ε = n² の線形補間

選択条件の計算過程と数値表
λ [nm]noneng,ong,e

範囲の読み方:450~1064 nmは本教材で設定した使用範囲です。全組成・両偏光について、この範囲全体が同じ精度で実測されたという意味ではありません。原著の試料、測定波長、フィット範囲を区別してください。吸収係数や消衰係数 κ は計算していません。

02 解析式を組み立てる

近似の出発点と、係数の出典を分ける

ウルツ鉱型AlGaNは一軸性結晶です。c軸に垂直な誘電率主値を ε⊥ = no2、平行な主値を ε∥ = ne2 とします。ここで計算する ne は主屈折率です。任意方向へ進む異常光の屈折率は伝搬角にも依存します。TE/TMとの対応には結晶軸と導波路の向きが必要です。

講義で使用する1項Sellmeier式

np2(λ,x) = 1 + Ap(x) λ2λ2 − Lp(x)2 (1) p = o, e
Ap(x) = B0p + B1px
Lp(x) = C0p + C1px + C2px2

λ と L はどちらも nm、A と B は無次元です。L は近似式の共鳴波長パラメータであり、吸収端の波長そのものではありません。Soltaniほか(2016)のAppendix、式(1)・Table 2 の括弧内調整値を講義標準として使用します。

Table 2の係数。括弧外中心値は比較用に併記
係数単位調整値 o調整値 e中心値 o中心値 e
B014.14464.29574.14464.2957
B11−1.0021−0.9817−1.0021−0.9817
C0nm190.719191.71190.719191.71
C1nm−75−75−82.999−76.363
C2nm37.5212527.52123.427

係数の「中心値と調整値の差」は誤差棒ではありません。原著Table 2は係数の許容幅も示していますが、本計算は係数間の相関や不確かさの伝播を評価しません。

導出1:Lorentz振動子からSellmeier式へ

束縛電子の変位を u、電子の質量を m、電子の電荷を −e とします。電場を E(t) = Re[E0e−iωt] として、同じ角周波数の定常応答を求めます。

mü + mγu̇ + mω02u = −eE
u0 = −eE0/mω02 − ω2 − iγω

単位体積あたり N 個の電子が分極 P0 = −Neu0 を作るので、χ = P0/(ε0E0)。非磁性媒質では ñ2 = εr = 1 + χ です。

χ(ω) = Ne2/(ε0m)ω02 − ω2 − iγω

透明域で減衰を省き、ω = 2πc/λ、L = 2πc/ω0 を代入します。

1ω02 − ω2 = 1ω02λ2λ2 − L2
A = Ne2ε0mω02

これを χ に代入すると式(1)の形になります。実材料では多数の遷移をまとめた有効な近似式です。A(x)、L(x) の数値や組成多項式は、この振動子の議論だけからは決まらず、測定データから与えます。

導出2:波長微分と群屈折率

組成 x を固定して微分します。A と L はこの微分では定数です。

2ndndλ = A2λ(λ2−L2) − 2λ·λ2(λ2−L2)2
dndλ = −AλL2n(λ2−L2)2 (2)

β = n(ω)ω/c を微分し、vg = (dβ/dω)−1、dλ/dω = −λ/ω を使うと、

ng = cvg = n + ωdndω = n − λdndλ (3)

式(2)の単位は nm−1 なので、式(3)の λ もnmで入力します。この ng は材料の主値ごとの分散から求めた量です。導波路の群屈折率には、モード分散も含めた β(ω) が必要です。

導出3:混晶の n と ε を線形補間する違い

同じ波長・偏光で nA = n(AlN)、nB = n(GaN) を計算します。

nlin = xnA + (1−x)nB
nε = √[xnA2 + (1−x)nB2]
nε2 − nlin2 = x(1−x)(nA−nB)2 ≥ 0

nlin2を展開すると交差項 2x(1−x)nAnB が現れ、上の差が得られます。二つの補間は端点では一致しても、途中の組成では異なります。組成依存Sellmeier式は A(x)、L(x) を通じて混晶の変化を表します。バンドギャップのボーイング係数を屈折率へそのまま流用できません。

03 論文の読み分け

式の起源・測定の根拠・設計用の係数調整

2001
組成依存式の起源

Webb-Wood ほか

Measurement of AlxGa1−xN Refractive Indices

G. Webb-Wood, Ü. Özgür, H. O. Everitt, F. Yun, H. Morkoç. physica status solidi (a) 188(2), 793–797 (2001).

プリズム結合法で常光・異常光の分散を測定し、組成と波長を変数に持つ1項Sellmeier式へ整理した論文です。出版社の要旨では 0 ≤ x ≤ 1、457 nm < λ < 800 nm を測定対象としています。ここでは出版社の書誌・要旨と、Soltani論文での引用・係数表を参照しています。

2003
測定と精度の根拠

Sanford ほか

Refractive index study of AlxGa1−xN films grown on sapphire substrates

N. A. Sanford et al. Journal of Applied Physics 94, 2980–2991 (2003). DOI: 10.1063/1.1598276

HVPE・MOCVD薄膜をプリズム結合法と透過・反射分光で調べています。主な比較点は、442~1064 nmの離散波長での測定と、試料の吸収端付近から2500 nmまでの常光の解析を分けていることです。広い範囲の常光には2項式を使用し、異常光の442~1064 nmには1項式を使用しています。

プリズム測定の最大標準不確かさは屈折率で±0.005、組成で±0.02。これは当該測定の値であり、このHTMLの全条件に適用できる誤差保証ではありません。

読む箇所:冒頭要旨、分散フィットの節、Table V、Section IXの適用範囲の議論。

2016
本計算の採用式

Soltani ほか

AlGaN/AlN integrated photonics platform for the ultraviolet and visible spectral range

M. Soltani, R. Soref, T. Palacios, D. Englund. Optics Express 24, 25415–25423 (2016). DOI: 10.1364/OE.24.025415

AlGaN/AlN導波路の解析で用いる屈折率を、Appendixの式(1)とTable 2に整理しています。Webb-Woodの式を用い、係数の許容幅の中でSanfordのデータと合うよう調整した値を括弧内に示しています。講義と本HTMLの標準計算は、この括弧内の値に対応します。

論文では300 nmまでの延長を別研究との比較で検討しています。本教材では、低Al組成を含めた一律のUV外挿を避け、450~1064 nmに計算範囲を限定します。

読む箇所:Section 2とFigure 3(屈折率差)、Appendix pp.25422–25423(係数の選択理由)。

実デバイスへ使う前に:試料の成長法、結晶方位、温度、歪み、波長域を確認します。吸収端付近やUV、高濃度キャリアの条件では、複素誘電率と追加の物理模型を検討してください。混晶の値を全組成で一律に実測したものとして扱わないことが要点です。

04 演習と再現計算

予測を立て、計算し、微分と端点で検算する

演習

  1. 調整値・460 nmで x = 0、0.1、0.2、1 の no と ng,o を求める。
  2. x = 0.2で、組成依存式と n・ε の線形補間を比べる。差の符号を式から説明する。
  3. x = 0.65で ne − no の波長依存を調べる。
  4. 中心差分 [n(λ+h)−n(λ−h)]/(2h) と式(2)を比較する。h を小さくしすぎた場合も考察する。

基準値

講義標準の調整値、x = 0.1、460 nm、常光:

Ao = 4.04439
Lo = 183.59421 nm
no = 2.410542006
ng,o = 2.788682702

既存教材の lesson01_sch/quantum_sch.py と同じ解析式です。

教員用:演習1・2の答え
xno(460 nm)ng,o(460 nm)
02.4504984062.874466706
0.12.4105420062.788682702
0.22.3731062492.713282067
12.1295010602.336705457

x = 0.2 の線形 n は 2.386298937、線形 ε は 2.389750803。両者は上記の組成依存式と一致しません。

Pythonでも同じ条件を再現する

追加ライブラリを使わないPython 3のコードです。下のボタンは現在の組成・係数セット・波長範囲を埋め込んだスクリプトを保存します。実行すると、同じフォルダへ数値CSVを出力します。


既存教材:Pythonの使用方法 / 板書詳説 / 対応スライド

量子光エレクトロニクス特論2 2026年9月23日作成。係数と書誌は原論文・出版社・NIST公開情報で確認。計算は端末内で完結し、入力情報を送信しません。単一HTMLとして持ち出せます。保存済み資料への相対リンクは元の教材フォルダ配置で利用できます。