ファンダムとは、熱心なファンがつくるゆるやかなネットワーク(人間関係など)や、独自の文化(言葉遣いやマナーなど)のことです。最近は「推し」や「沼」という言葉とともに、日本でもファンダムが注目されるようになってきました。
ファンダムというと、例えばジャニーズやK-Popのアイドルを追いかける熱心なファンのことが思い浮かびます。でも、ファンダムの対象はアイドルだけではありません。野球やサッカーのようなスポーツでも、そしてここで取り上げている乗用車やカーレースなどのクルマ文化でも、熱心なファンが独自の世界を作りあげています。
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英国でミュージアムを訪れると、よくクルマを見かけます。気になってくると、写真を撮ったり、展示の解説を注意深く読むようになりました。乗用車だけでなく、レーシング・カーも展示されています。
私の研究で、英国のクルマ文化に関心を持つようになったきっかけは、自分が専門として研究してきた英国のナショナル・アイデンティティと深く関わっていると考えられたからでした。

英国では、イングランドでも、スコットランドでも、ミュージアムでクルマ文化をよく見かけました。


上の写真では、同じ英国でも、イングランドではイングランドのチーム(マクラーレン)が、スコットランドではスコットランドのチーム(スチュワート・グランプリとその系譜にある車両)が展示されていますね。
展示されているのは車両だけではありません。選手(レーシング・ドライバー)のような人間についても展示の対象となっています。

上のヘルメットは、スコットランド出身で、アメリカで活躍したダリオ・フランキッティ選手のグッズです。スコットランドの誇りとして展示されていたと考えられます。他にも多くのスコットランド人選手のグッズが展示されていて、その多くにはスコットランドの国旗がデザインとして組みこまれていました。
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こうしたクルマ文化とナショナル・アイデンティティとの関係から、やがてファンは何を考え、どのように楽しんでいるのだろうか、とクルマ文化のファンダムへと関心が移っていきました。
(この先は、2022年に発行予定の専門書で書きました。また発刊されたら続きを紹介したいと思います)