学生にはあまり知られていませんが、実は加藤は現代スコットランド研究の専門家です。多分、そういうことになっていると思います。おそらく、そのはずなので、ちょっとアピールしておこうと思います。だって、学会にも入っているし、協会にも加盟しているし……。でも、アピールが足りないので、広くアカデミアでは「スコットランドといえば、加藤さん」とはあまり認知されていない気がしており、まだまだ残す人生でやるべきことはたくさんありそうです(前向き思考なのです)。
あー、愚痴っぽくなりましたが、さて。
スコットランドは、英国(イギリス)の北部を占める地域です。
2016年現在、スコットランドは独立国家ではありません。あくまでも、英国の中の一部分・一地域です。でも、21世紀に入ってからは地方分権(専門的には権限委譲(デヴォリューション)と言います)が進んでいて、2014年9月には独立しそうになりました。でも、独立しませんでした。
北海道とスコットランドは、地理的にはよく似ています。不思議なことに、同じぐらいの人口(約500万人)で、同じぐらいの面積(約8万平方km)です。だから人口密度も、よく似ています。ま、かなり大雑把に見積もっていますが、だいたい正解です。
この地図の薄い緑色の部分が英国(グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国)で、スコットランドは、濃い緑色の部分です(この地図の原本は Wikimedia Commons を参照してください)。
よく見ると大きな島(グレートブリテン島)の北の部分だけではなく、周辺のちっちゃな島も濃い緑色に塗られていますね。大きな島から北に延びているのがオークニー諸島、そのさらに北に散らばっているのがシェトランド諸島。大きな島に目線を戻して、その西に広がっているのがヘブリディーズ諸島です。
おおむね、夏は涼しくて、冬は寒いです。スコットランドは北半球のなかでもかなり北に位置しているので、どちらかといえば北欧に近いと考えましょう。
このように、スコットランドは、ヨーロッパの北の端っこにある、小さな地域です。
18世紀(1707年)から、英国という連合王国(UK)国家のなかの一部分になっています。
今、この小さなスコットランドが、とても面白くなっています。
なぜなら、スコットランドが「英国から独立しようかな?」と、公言しはじめたからです。「え、そんなこと、本当にできるの?」「できないでしょ?」「もし独立しちゃったら、英国はどうなるの?」「EUはどうするの?」「あ、じゃあウチも独立しちゃおうかな?」と、世界的な注目を集めています。
もちろん独立という政治的な問題の背景には、それを裏付けるようなスコットランドの歴史や文化があります。古代ケルト人やら、キリスト教やら、少数言語(スコットランド・ゲール語)やら、音楽(バグパイプ、ハイランド・ダンス)、移民(北米やオセアニアへ、そしてパキスタンやジャマイカから)など、虚実入り交じって(?)、たくさんの検討すべき課題が山積みです。
人口500万人の小さな地域で、独立した主権国家でもないのに、なかなかにエキサイティングな地域でしょう。
なぜ私はスコットランドを研究対象に選んだのでしょうか?
これには多くの偶然が関わっているような気がします。
実は、上に書いたことは、すべて後付けです。最初は何も知りませんでした。
大学生のときスコットランドの存在を知りましたが、最初からスコットランドを「狙って」いったのではありません。
そもそも、大学生のときに「西洋史学」という海外の歴史を研究する部門に入学してしまったことが偶然の始まりです。その後、研究する時代を〈現代〉、国は〈英国〉、と研究テーマを狭めていったなかで、いろいろあって、偶然〈スコットランド〉に落ち着いてしまった、という感じです。
「へぇ〜、おもしろそうだな」と。縁もゆかりもありません。行ったこともなかった。
もちろん、スコットランドという国が好きになれそうだったし、結果として実際に好きになれた(研究者としての客観的な評価ではなく、一個人としての主観的な評価です)というのも、偶然ではありますが、大きいでしょう。嫌いなものは長続きしません。
今こうして生活ができているのはスコットランドのおかげです。今後もスコットランドと仲良くしていきたいと思っています。
その後、英国の文化研究(カルチュラル・スタディーズ)との出会いもあるのですが、それはまた別の物語りですので……
みなさんもスコットランドをよろしく。
※名城大学人間学部の学生に対しては「英語圏文化研究」の科目で、スコットランドに関する興味深いお話を展開中です。一般に対しては、名城大学の出前講義でスコットランドに関わるお話も引き受けております。