COVID-19の影響で、中止だらけの年度末です

ゼミ担当の加藤です。 COVID-19の感染拡大を防ごうとする動きが各方面に波及し、仕方のないことですが、残念な年度末となっています。 人間学部では、2月出発の海外研修(オーストラリア)の学生派遣を中止しました。当ゼミに … “COVID-19の影響で、中止だらけの年度末です” の続きを読む

ゼミ担当の加藤です。

COVID-19の感染拡大を防ごうとする動きが各方面に波及し、仕方のないことですが、残念な年度末となっています。

人間学部では、2月出発の海外研修(オーストラリア)の学生派遣を中止しました。当ゼミに内定している2年生の2名がその影響を被り、今回は留学を断念せざるを得なくなりました。彼女らに対しては「今はタイミングが悪かった、在学中に留学を目指そう」と励ましたところです。

さらにその後、名城大学全体でも動きがあり、3月派遣の海外留学は全て中止3月17日の卒業式も中止、と正式な発表がありました。

3月にはイギリスのヨーク・リバプール・ロンドンで実施する人間学部の国際専門研修に当ゼミから2名が参加する予定でしたが、キャンセル。そして、今年卒業するゼミの4年生の面々からも、人生の区切りとなるセレモニーに参加できないことに、無念の声が届いています。

さらに、あまり考えたくないですが、先のことまで考えると、現在、就職活動中の3年生に何らかの悪影響が及ぶのではないかと懸念しています。

なんだか暗い記事になりましたが、人間学部では対応を着々と進めていて、教員も事務も会議、会議、会議、会議、、、この会議は、感染拡大とはならないのでしょうか?という笑えないジョークもありますが、学生の皆さんの安全を守りつつ、失われた機会をどのように補償できるのか、まさに「善処」! 真剣な検討が続いています。

個人的には、過度に自粛したりデマに踊らされたりせず、経済活動を縮小させることなく、文化的に、なるべく日常をいつも通りに過ごすように努めたいと思っています。

かとう

エッセイ:餃子の王将

ゼミ担当の加藤です。 ポピュラーカルチャーを議論している「国際文化論」の授業の余談で、餃子の王将について話そうとした回があったのですが、何かの都合で話せませんでした。何人かの学生から、最終回のペーパーで続きが気になるとい … “エッセイ:餃子の王将” の続きを読む

ゼミ担当の加藤です。

ポピュラーカルチャーを議論している「国際文化論」の授業の余談で、餃子の王将について話そうとした回があったのですが、何かの都合で話せませんでした。何人かの学生から、最終回のペーパーで続きが気になるというリクエストがあったので、ここに書いておきたいと思います。気がついてくれたらいいんですが。

名古屋では「餃子の王将」は、ファミレス的なイメージで展開していまして、ファミリー向けに主に国道沿い大型店があったりします。大きな駐車場もあるので、みんな車でいく感じですね。名城大学の学生によると「居酒屋とファミレスの中間」という意見もありました。バーミヤンなんかと同じカテゴリかも。

しかし私が20年近くを過ごした京都は、餃子の王将の本社や第一号店があったりするディープな本拠地で、もっと餃子の王将はローカルで「大衆的」なイメージです。カウンター席を中心とした小さな店舗が市内にものすごい密度で存在していて、それぞれに店主の個性が染みついていてオリジナルメニューだらけで、夕飯のおかずを一品だけ近所の人が持ち帰りで買いに来るような、日常生活のなかになじんだ食堂みたいな感じです。

日常的で大衆的という意味では、京都に大量に存在する大学生にとっては「安い値段でおなかがいっぱいになる」ニーズを満たし、労働者にとっては「昼間からカウンターで酒が飲める」「仕事帰りに餃子をつまみに一杯ひっかけてから帰る」ニーズを満たせる店です。

このあたり、名古屋とはちょっと違う感じがする。京都にいったら餃子の王将に入ってくれ、それもなるべく小さくて汚い(失礼)ところに。

……という話を、おそらく授業でイギリスの労働者階級とは、とか、日本の演歌を受け入れているのはどんな集団だろうか、というあたりで、私が京都の「餃子の王将」の話をしたかった、ということです。

この話には続きがあります。

当時学生で、餃子二人前とライスで500円の20歳ぐらいの私にとって、「餃子の王将で生ビール」って憧れだったんですよ。横で昼間っから餃子に生ビールをキメてる素性不明な人とか、王将でお酒飲んでる仕事帰りの会社員とか普通にいまして、「(僕にとっては最小限の予算で最大限のカロリーを摂取できるだけのお店である)餃子の王将で、(定食一食分ぐらいの500円ぐらいする)生ビール飲めるようになったら、人生あがりだな」って思ってました。

で、こうして就職しまして、いつだったか、京都の餃子の王将で生ビール頼んだときは、うれしかったなぁ。ついにここまで来たか、という感慨がありました。餃子の王将で生ビールを頼めるレベルに達したぞ、と。

あの瞬間は人生のサクセスを感じていたんですが、その後、餃子の王将の生ビールは、いわば「きつい労働をやりすごすためのアルコール」という、まさに19世紀の産業革命期のイギリスの工場労働者にとってのジン(かなり強い蒸留酒)、みたいな役目を果たすことを、私は大学での労働を通じて身体に叩き込まれていくのです。餃子の王将の生ビールは、無知な学生にとっては成功と憧れの対象でしたが、労働者にとっては飲まなきゃやってられねえよ的なドラッグだった。ほんと、酒でものまねぇとやってられねえよ、バン!

……さて、名城大学に移籍したのを機に、京都から名古屋に引っ越してきて、「久しぶりに餃子の王将で生ビールをキメよう」と、近所にある国道沿いの王将へ行きました。日曜日の昼間かな、ひとりで。クルマでいくと飲めないから、ばからしいなと思いながら30分ぐらいかけて歩いていきました。

で、カウンター席に座って、「生ビールと、」って言ったら、注文をとりにきた店員さんがギョッとしたんですよね。「え?飲むの?」って。こっちからしたら、それこそ「え?」ですよ。「なんで餃子の王将のカウンター席にひとりで座って生ビールを飲まないの?」ですよ。でも、違うんだなと思いました。ああそうか、名古屋では、というか、私がたまたま入った国道沿いの餃子の王将には、そういう「文化」の人が来ないんだなあと。

階級とは、文化とは、を考えさせるエピソード「餃子の王将」でした。異文化なんて、日常生活のなかで一歩違えるだけで、いくらでも身近にありますよね。

こんな長い話を授業の「余談」でする気だったのか。

かとう


エッセイ:好きな映画を三つあげなさい

名城大学人間学部で現代文化史やメディア研究を教えている、加藤です。 私のゼミには、映画をみる学生が多い気がします。もちろん全然見ない学生もたくさんいますが、おそらく世の中の平均よりは、映画をみている人口が多いと思います。 … “エッセイ:好きな映画を三つあげなさい” の続きを読む

名城大学人間学部で現代文化史やメディア研究を教えている、加藤です。

私のゼミには、映画をみる学生が多い気がします。もちろん全然見ない学生もたくさんいますが、おそらく世の中の平均よりは、映画をみている人口が多いと思います。私が言うのもなんですが「なんでこの人たち、こんなに映画を見てるのかな?」って。私より賢い学生たちのことを尊敬してます。

私は大学生の時が、映画視聴のピークでした。2000年代のイギリス映画ブームの真っ只中! 京都に住んでいて、狭い町の中に大きな映画館は新旧あったし、いわゆる「単館系」を上映してくれる小さなこだわりの映画館も複数ありました。レイトショーをみると終バスの時間を過ぎてしまって帰宅できなくなるんです。京都は夜が早い町です。でも、気合いで歩いて帰りました。

なんせ学生時代は夜更かし放題だし、映画をみる時間は無限に時間を捻出できたと言えましょう。

それが今や、仕事のために映画をみます。時間ないんで、早送りもしますよ。映画を題材とする卒業論文を年に2〜3つは指導しているんですが、大抵は私が見たことがない作品が選ばれるので、指導のためにみる。仕事のために映画をみる。他に、授業で「引用」したいので、みる。みたいな。なんだかつまんないな、この映画人生! 書いてて悲しくなってきました。自分の好きな映画は見てないのか。映画館にも行くけど、ほとんどが仕事がらみのような。だったら経費で落とせないのかな?

そうだ、自分の人生の中で大好きで大好きで仕方がない映画のことを考えて、映画を仕事から自分のものに取り戻そう。ダークサイドから抜け出そう。そう思いました。

でも「ベスト10」で順位をつけるのは難しいし、10作品も挙げるのは大変そうなので、三つだけにします。以下、あまり深く考えず、気取らず、直感で選んでみました。

いきなりアニメで申し訳ないんですが、私の人生を変えた作品としては、あまりにも「ありきたり」で恥ずかしいんですが、仕方がないので出します、『機動警察パトレイバー2: The Movie』(押井守監督、1993年)。

パトレイバーって何なんですかね。実は、よく知らないまま、高校の同級生だった久保くんに映画館に連行されました。今池だったか池下だったか。付き合わされただけだったんですが、この映画にはすっごくゾクゾクしました。ほとんどパトレイバーが関係ないっていう、よく原作を知らなかった私にはちょうど良かった。でも、パトレイバーのファンだった久保くんはがっかりかもしれません。

この映画、物語も絵も音も全てが暗いんです。全てが好きですね。原作のパトレイバーは重いテーマもあるんですが、もっと明るいんですよ。この映画を見てから、原作も全て読みました。そっちはそっちで「アリ」ですね。

この映画は後日、音楽等を再収録したサウンドリニューアル版が出たんですが、圧倒的に1993年の初回上映時の音声のままがいいですね。ブルーレイでは選べます。でも、これはただの私のノスタルジーかもしれません。

で、いきなり時代が飛ぶんですが『インターステラー』(クリストファー・ノーラン監督、2014年)を挙げます。先ほどパトレイバーで高校生の時の話をしましたが、私が高校生の時は圧倒的に『新スター・トレック』でした。メーテレの深夜枠で放送していたんじゃないかな。私の中学生がRPGやらテーブルトークの影響で「魔法ファンタジーの時代」だったとすれば、高校生は「SFの時代」です。これもなんだか「ありきたり」な人生で、本当に申し訳ないです。

私にとってのSFの魅力というのは、歴史物語なんです。SFは時間の流れを歴史として上手に語らないと、成立しない。真実っぽさの演出。全部フィクションなんですけどね。クラークとかハインラインとかアシモフとかディックとか有名な翻訳SFには全て後から「入門」したんですが、どれも歴史物語としてよくできてて感動しました。世界史や日本史が好きな学生は、きっとSFも好きになれると思います。

そして、この『インターステラー』の壮大さ。時間軸を超えたロマン! 一作品で強引にやりきりました。なんで辻褄があって見えるのか、何度見ても不思議です。今作に関しては、歴史も何もあったもんじゃないです。パイプオルガンに着目したハンス・ジマーの音楽が感動の40%ぐらいを占めるかもしれません。それもいいじゃないですか。宇宙SFには、それこそ『2001年宇宙の旅』(1968年)の時代から、なぜかアナログ楽器なんですよ。

さて、監督のクリストファー・ノーランです。洋画好きのかたなら、よくご存知だと思います。『メメント』(2000年)は京都の映画館で見ました。『バットマン・ビギンズ』(2005年)でしょうか。最近だと『ダンケルク』(2017年)。だいたい、好きな映画監督の作品って、感性がハマると言うんでしょうか、どんな球でも取れるんですよね……なぜでしょう。私はそんなに詳しいわけではありませんので、マニアのかたはご遠慮ください。でも、他に感性がハマる監督を挙げると、デヴィッド・フィンチャーも、そうです。ノーランとフィンチャー。どっちも暗いな。

さっきの『パトレイバー2: The Movie』もそうですが、暗いのばっかりですね。今、気がつきました。薄々わかっていたけど、自分、内省的なので……。パーティーーー!みたいなの、興味ないですね。ごめんなさい。

で、もう一作品は、決められませんでした。

ごめんなさい。

さっき、デヴィッド・フィンチャーの名前は出してしまったので、彼の監督作品『セブン』(1995年)、『ファイト・クラブ』(1999年)、『ベンジャミン・バトン』(2008年)、『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)……全て良きものですが、挙げるのはやめておきます。

そうするとやっぱり、私が英国文化の研究者に踏み出すきっかけとなったスコットランドの俳優、ロバート・カーライルの主演作品から選ぶか。いやしかし、どことなく仕事がらみになってしまうのが、気に入らないので、「暫定の三つめ」ということで。

『フェイス』(アントニア・バード監督、1997年)。マイナーすぎて、ブルーレイ化されていませんでした。

ロバート・カーライルというと『トレインスポッティング』(1996年)のキレた演技が目を引きますが、冴えない地味な中年役で、ぜひ、見てください。『司祭』(1994年)とか『アンジェラの灰』(1999年)とか。連続ドラマで『マクベス巡査』(1995〜97年)も。

今やすっかりメジャー俳優になって、地味な作品には出てくれなくなった感がありますが、個人的には『フェイス』のロバートが、最高です。

うーん、でも、なんか仕事くさいチョイス。これ、やっぱ無しで。三つめの映画はまた考えておきます。

かとう